人を増やすだけでは追いつかない。山口県の中小企業がSmartHRから考えたいこと
人手不足のなか、採用と並行して取り組みたい事務負担の軽減。SmartHRの仕組みと、山口県の企業で役立つ場面、導入前の注意点を考えます。
人が足りない。その横で、書類の仕事も増えていく
人を採りたい。でも、すぐには採れない。その間も、入社の手続きや給与明細の配付、年末調整の準備は待ってくれません。社長や事務担当者が、その分まで抱えている会社もあるのではないでしょうか。
山口県中小企業団体中央会が2026年7月30日に公表した調査では、回答した400事業所の72.8%が、人手の不足またはやや不足を感じていました。調査時点は5月1日、対象は1,500社です。県内企業すべての状況を示す数字ではありませんが、人材確保が身近な課題であることがうかがえます。
採用に取り組みながら、今いる人の仕事も軽くできないか。その選択肢の一つとして、今回はSmartHRを取り上げます。
SmartHRは、何をまとめる仕組みなのか
SmartHRは、従業員情報や人事・労務の業務をクラウドで管理するサービスです。入社手続き、雇用契約、年末調整、給与明細の配付などの機能があり、人事評価や資格・研修の管理にも対応しています。利用できる範囲はプランやオプションによって異なります。
ポイントは、紙を画面に置き換えるだけでなく、従業員情報をまとめて、関連する業務で活用することです。なお、給与明細の配付と給与計算は別の機能です。必要な機能が契約に含まれるかは、一つずつ確認する必要があります。
なぜ有効なのか。同じ情報を何度も扱う仕事を減らす
ここからは、公式の機能情報を踏まえた私の考察です。入社時に受け取った住所を名簿へ入力し、別の書類へ転記し、変更があればそれぞれ直す。こうした作業では、入力そのものに加え、情報が一致しているかを確かめる時間もかかります。
情報を一元管理し、対応する手続きやシステムへつなげられれば、重複入力や照合を減らせる可能性があります。紙の配付・回収をオンラインのやり取りに変えることも、事務担当者と従業員の双方の手間を減らすきっかけになります。ただし、連携先や設定によっては手作業が残ります。
そこで生まれた時間を、お客様への対応や従業員との面談に使う。私が大切だと思うのは、その先です。削減した作業時間が、そのまま人件費の削減になるとは限りませんが、限られた人数で仕事を続ける余裕につながることは期待できます。
山口県で考えたい、現場と事務所の距離
山口県の企業立地案内は、製造業を支える人材や産業集積を県の強みとして紹介しています。こうした地域で、工場や現場と事務所のやり取りをどう整えるかは、一つの着眼点になると思います。
例えば、工場、建設現場、複数の店舗で働く人が、書類を提出するために事務所へ立ち寄っている会社を想像してください。対応する手続きをオンライン化できれば、受け渡しのための移動や待ち時間を減らせる可能性があります。これは活用場面の例であり、県内企業が一律にそうだという意味ではありません。
山口県だから必ず合うのではなく、人手不足に加え、紙の往復や情報の分散がある会社に合う。地域の課題とサービスの仕組みは、そのようにつなげて考えるのが適切でしょう。
一人の経験だけに頼らない会社へ
もう一つ考えたいのは、仕事の引き継ぎです。「あの人に聞けば分かる」は心強い一方、その方が休んだり退職したりすると、情報の場所から探し直すことにもなりかねません。
システムの導入に合わせて、情報の置き場所、確認する人、処理の手順を整理する。適切な閲覧権限も設定する。そこまで取り組めれば、担当者の交代や世代交代に備えやすくなると考えます。誰でもすべて見られるようにすることとは違います。
導入が答えにならない会社もあります
手続きが少なく、今の給与・勤怠ソフトで十分に対応できているなら、まず現在の設定や運用を整える方がよい場合もあります。SmartHRだけが改善の方法ではありません。
導入時には、データ登録、既存ソフトとの連携確認、操作説明にも時間がかかります。スマートフォンなどに不慣れな方への支援も必要です。従業員への入力依頼だけで終わらせず、誰が困りごとを受け止めるかまで決めておきたいところです。
費用も、利用料と必要なオプションに加え、移行・教育・運用の時間を含めて判断します。機能の導入だけで、採用難や離職が解決すると考えるのは早計です。
最初の一歩は、時間のかかる作業を一つ選ぶこと
いきなり会社全体を変える必要はありません。年末調整の回収、給与明細の配付、入社情報の転記。まず一つ選び、誰が、何回、どのくらい時間を使っているかを書き出してみてください。
その作業を減らせるかを、既存の仕組みの改善とSmartHRなどの導入で比較する。導入後も同じ作業時間を測れば、実際に役立ったかを判断しやすくなります。人を増やす工夫と、人の負担を減らす工夫。その両方を、地域の会社の経営で考えていきたいと思います。
採用だけに解決を求めず、今いる人が力を発揮できる仕事の仕組みも整える。まずは、毎年・毎月繰り返している事務作業を一つ、点検するところから始めてみませんか。
- 山口県中小企業団体中央会|令和8年度人材確保における取組み状況調査結果(2026年7月30日公表/調査時点5月1日)
- 山口県企業立地ガイド|豊富な産業人材(2026年10月23日確認)
- SmartHR|機能一覧(2026年10月23日確認)
- SmartHR|料金プラン(2026年10月23日確認)
※情報の基準日:2026年10月23日。地域調査は回答事業所の結果であり、県内全企業の状況やSmartHRの導入効果を示すものではありません。地域との相性、活用例、期待される効果は筆者の考察です。機能・料金・連携条件は契約前に公式窓口へ確認してください。
